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殺し屋 1の話

お待たせしました。新連載開始。とりあえず何本も連載を持って、完結編は知ったことかいの夢枕獏氏を見習います。map1は、後一つピースがはまると書けそうなのに、トホホ。

「殺し屋 1の話」
 私は、殺し屋。履歴書の職業欄に殺し屋と書きたいぐらいである。
持って生まれてしまった才能だから仕方が無い。ほとんど苦労もせずに、全ての格闘技に精通し、銃器からナイフまで手足のように動かせる。
時々、この才能を見せたくなってしまう時がある。
この前も、欲望に負け、ダーツバーに行ってしまった。目立ってはいけない。初めての店に行き、ひっそりと、ボードの前に立ち、MYダーツを取り出す。指紋は残せない。ダブルブル(中心の中心)に投げるのはいともたやすいことだ。それでは目立ってしまう。3点のダブルリング(一番外側の細い部分)や20点の0の上など、自分で決めた場所に分散させていかなければならない。そうして何ゲームか繰り返していると、ダーツ命の腕自慢達が、必ず声をかけてくる。
「どうです、一勝負」自信満々だ。私は何秒で彼を抹消できるか、考えながら下から上まで眺めてみた。2秒か。
「私、ヘタなので、ハンデもらわないと」
「マイダーツ持ってて、よく言いますよ」余裕の表情だ。小遣い稼ぎしたいらしいな。勝つのは簡単だが、ちょっと遊んでみるか。
「さっきから、見られてたでしょう。勝負にならないですよ」
「じゃあ 軽く1回やってみましょう」と、彼もマイダーツをテーブルに置いた。自信有りそうだな。
「カウントアップ(ダーツを3本1ラウンド、それを8ラウンドで合計点を競う)ですか。だと、私500点もなかなか行かないですよ」
「私も600点くらいですよ」いや、700-750ぐらいは出せそうな感じだな。ちなみに満点だと1440点なのだが。私の本当の平均点を聞いたら、彼はどうするのだろう。
「じゃあ、100点ハンデくれます」
「それは、ちょっときつすぎますよ。50点でどうですか」150あげても、大丈夫って顔してるじゃないか。まあさっきからの私の点数を見てれば、仕方ないな。ただ、カモか、逆にカモを探してる奴かで悩んでいるんだろうな。
「授業料と思って、やってみましょうか。ところでどれぐらいで」
「1で」店での賭けは禁止の為か、彼は声を落とした。
「わかりました。先攻後攻決めますか」と、私は無造作にダーツを投げた。ダブルブル50点。時々勝手に指が狙っている。
「こんなところで、運を使うって有りますかね。どうぞ」彼の心が手に取るようにわかる。悩んでいる。(俺は嵌められたのか。だが、嵌めるならここでダブルブルなど有り得ない。単なる奇跡か)
彼は、ナンバ-20のトリプルリング(内側の細枠でナンバーの3倍の得点で、20の場合60点最高得点)を練習を兼ねてか、狙っているようだ。おおおおっと。シングル(20のまま)「もうちょっとで」彼の実力は把握できた。今が真剣度100の力量だ。やはり800オーバーも可能そうだ。このあたりのダーツバーの客なら負ける事は無いだろう。
「惜しかったですね。狙ってあそこに行くなら、思いやられるなあ。後攻でお願いします」
「あはは、ダブルブルに刺しておいて、よく言いますよ。じゃあ始めましょうか」
冷静さを取り戻したのか、3本のダーツをリズム良く投げ始めた。私は彼の点数と70点程度の差を保ちながら、最終ラウンドに進んでいった。彼が、最終ダーツを投げ終えた。580点だ。まだまだ、底は見せないようだ。
私は、535点にした。ハンデ分が有るので、5点勝ってしまった。
勝っては駄目だろうって、誰か仰っていますか。駆け引きは殺し屋にとって、重要な能力である。いつも訓練としか考えていない生活なのだ。彼は、無言で私に折り畳んだ1万円札をマイダーツの下に滑り込ませた。
「ラッキーでした。お釣りを。あったかなあ」
「どういうことですか」怪訝そうに彼が聞いてきた。
「いえ、お釣りの9,000円ですが」
「おいおい、1は1万だぞ」あきれた彼の顔がおもしろい。
「そんな。知ってたら、ブルブルして、勝てませんでしたよ。頂けませんね」私は札を彼のマイダーツの下へ。
「いいですよ、勝負ですから。ただ、次からハンデ無しでいいかな」彼の確信した顔がおもしろい。
「次負けても元々だし、いいですよ」
それから、彼と私の騙しあいは続いた。 勝ち続けるのは簡単だったが、目立ってはいけない。1勝1敗のペースでゲームは消化されていった。初めの1万円だけが私に残り、後は彼の1万円札が私に、彼にと往復するのみだった。彼が、どんどん得点を上げていっても、私が付いてくるのであせりはじめていた。しかし。私の勝ち方は、偶然にしか見えない。初めに高得点を上げてもずるずる下がってきて、最後は数点差。一度など軽く躓いてラッキーにも高得点ゾーンに。負け方にしても、ブル(中心の円の外側)ダブルブルが連続して、やはりプロかと思ったら、その後はボードから外れたり、1点だったりと彼のセオリーには無いのだろう。彼は余力を残しているものの、連勝出来ずにイライラ度が上昇していた。そろそろややこしくなる前に私はこの1万円でドリンクでも奢って帰る頃合かなと、考えていた。と、彼が新しい提案を出してきた。
「このままじゃ、すっきりしないな。次で最後にしよう。その代わり、点差にしようか」さあ、最後のパターンにもってきたみたいだな。まあ、ここまで引きずってきてるつもりなんだろうが。
「点差って、どんな計算にするんです?」私はわかっていたが、あえて聞いてみた。
「10点1でどうかな。高いかな」探ってきた。
「ずっと20点差くらいまでだし、まだ、1勝ってるし、大丈夫そうですね。今日は調子いいし、勝てるかもしれないし」少し彼に火をつけてみた。150-200程度差をつけて10万位手に入れる気なんだろう。負けるなんて考えてないだろうし、10万も持っていなさそうだが。
私はいつも100万以上持ち歩いている。急に海外に行ったり、逃亡する必要が出てくる可能性があるのだ。カードだって使えなくなるかもしれない。プロはいつも用意万端なのだ。
「決まりだな。じゃあ改めて先攻後攻決めようか」と、彼は、ダーツを投げた。ダブルブル50点。
「よし、よし」喜んでる彼がかわいそうになってきた。次元が違うんだよ。それより、彼の仲間が後ろに集まりだしていた。目立ちたくないんだよ、私は。とにかくこのミッションの第一ハードル:後攻を取るをクリアしなければならない。ここは偶然を装う上でも、17の3倍のトリプルリング51点でも刺しておこうか。
私は投げようとして、指からダーツが離れようとしていた。
「たっちゃああああん。どこ行ったかと思ったやああああん」私は、抱きつかれていた。
彼女を床に叩きつけ、ダーツの先端を耳穴に置き、
「ミッションの遂行中だ。どういうことだ」彼女は泣き叫んだ。一瞬にして、静まった店内。私はそんな小さい人間じゃないんだ。いや、違うんだ。ゴルゴ13と同じなんだ。殺し屋の条件反射なんだ。と言えたらどれだけ楽だろうか。私は彼女を立ち上がらせた。
「何やってんだよ。どうもすいません。酔っ払っちゃってて」たっちゃんがやってきた。
「この人怖い」「おまえが悪いんだよ、どうもすいません」たっちゃんは、引きずるように彼女を店の外に連れ出して行った。
「困っちゃうよね、酔っ払いは」つぶやきながら、ダーツを確認したが、やはり2点だった。仕方ない。このミスの原因究明、反省はICレコーダーに録音し、貸金庫に保存する。日々進化し続けることがプロの鉄則だ。
後ろのテーブルに戻っていくと、彼と仲間たちは、笑っていた。ジョークと思ってくれたのかな。それにしては、泣きそうな顔にも見えるが。
「ミ ミ ミッションって、」彼におびえが見える。
「テレビゲームのやり過ぎで、口癖になっててさ。やっぱり私が先だよね]
「後攻で、お願いします」急に丁寧な口調になった。私はダーツの先端のゆるみを確認し、最終の戦いへ向おうとしていた。
「なんかヤバインじゃないのか」「勝っても、ややこしそう」「さっきのアイツ逝っちゃってたぞ」
今度ゆっくり説明してやるから、今はそっとしといてくれないか。目立ってはいけないから、我慢してるんだぞ。
ボードに向かって立ち、ミッションに頭を切り替えた。第二ハードル:完璧な予測と脱出。先攻となったからには、最終8ラウンドの点差をどうするか。先攻では、大勝ちの恐れが有る。プロとして負けも許されない。また、目立たずに煙のように店から立ち去らなければならない。よく考えると、さっきの酔っ払い女も怪しい。あのタイミングで出てくるとは。後攻を取るための、彼の作戦だとしたら。振り向くなどと、初歩的なミスはしない。横のミラーで確認すると、彼らも私を凝視している。プロじゃないのか。これはマズイ。本当は全てが伏線で最終180点が可能だとすると、20万も取られるじゃないか。簡単だと思っていたのに、ここまで困難なミッションになるとは。とにかく、7ラウンドまでは、様子見でいくしかないか。ん、ダーツが無い。3本とも無い。どうしたんだ。ここは、何も無かったかのようにテーブルに戻ろう。
「緊張してるんでしょうかね。アハハ」と後ろを振り向き、彼らを見ると、私以上に緊張しているようだ。それに周りの人々までざわついている。ダーツを持たずに行っただけの事で、そんなにざわつくかね。
テーブルに戻ったが、ダーツが無い。どうしたんだ。あせってはいけない。彼がやって来た。少し眉間に皺を寄せて、すり寄ってきた。
「プロか、あんた。はめやがって。俺の番だ、抜いてくれ」なんだ。抜くって。ボードを見ると、しまった。20のトリプルリングに3本とも刺さっている。無意識の能力を出してしまっていた。自分の技量が恐ろしい。と言ってる場合ではない。どんどん状況は困難になりつつある。
「こんなこともあるんだ。神様がいるのかも」白々しかったかな。テーブルに戻ると、熱い視線だらけだ。
彼は、90点を叩き出した。緊張の中でいい仕事をしている。彼はまだ底を見せていないのかもしれないぞ。気を引き締めなければならない。
それからのラウンドは、私も冷静に1点2点に微妙に外しながら、彼を10点差で追いかける位置へ落とした。さあ、いよいよ最終8ラウンドだ。
「やっぱりたまたまだったのかな」「気の短いだけの野郎か」「とにかく勝って、食べに行こうぜ」
気の早い奴らだな、全部聞こえてるんだよ。私の聴力は人並みはずれている。耳せんが必要なくらいだ。
私は最後のダーツを持った。私はぐるっと、周囲を確認した。さっきの酔っ払いはいないか。新たな刺客はいないか。1メートル以内に近づけるわけにはいかない。
彼の今までの最高が、1ラウンド130点。だが100点前後がアベレージだ。センターのダブルブル2本と20点で120点前後。彼を110点上回っておけば、負けても1万前後だろう。勝つ確率も高い。いいね。プロらしい満足感が得られそうだ。
ダブルブルに2本という考え自体に甘えがあったのかもしれない。自分の能力を過小評価しすぎていたのかもしれない。1本目ダブルブルに刺し、2本目を発射。完璧すぎた。フライトと呼ばれる後ろの羽根の中央に刺さった。
どよめき。いけない、すぐに最終のダーツを。ダメだ。より完璧すぎる。またもフライトに刺さってしまった。
どよめきどよめき。目立ってどうするんだ。50点か。抜きに1歩進むと同時に、カチャーン。ダーツが落ちた。
彼はさっきまでと違い、小躍りでやってきた。
「落ちたら、ここではカウント0だぜ。だけど、かわいそうだから50点でもあげようか」
「わかってるよ。0でいい。でも、いいもの見れただろ」
「狙ったっていうのかよ」
「どうかな」
「勝ち分は頂くぞ」
10万以上の損失になりそうだな。ミッション失敗に加えて、目立ってしまっているのも問題だ。
テーブルに戻りながら、プロに負けは無いという信念を思い出し、ダーツを投げようとしている彼に近づいた。
「危ないぞ」「酔っ払いの真似するんじゃないか」仲間の声。
私は満面の笑みで、彼に近づき、耳元でささやいた。
「わわかった」

彼は、緊張したのだろうか。私にもっと差をつけようとしたのだろうか。それともプロとして、彼も私同様勝つ訳にいかなかったのかもしれない。ナンパー20の上に外し続けた。10点の負けだ。
「残念だったですね。さっきの1万円お返しします」
「ちぇ、もう関係ないんだからな。ほっといてくれ」1万円札をひったくった彼は、仲間と共に店を出て行った。
「おごってあげようと、思っていたのにね」私は誰にともなく、つぶやいた。
しかし、彼はなかなかの仕事っぷりだ。私ほどでは無いにしろ、前途有望だ。酔っ払い女を使うなど、手が込んでいる。マイダーツをケースに仕舞い、チェックに向かった。
「すまなかった、静かにダーツがしたかっただけなんだ」
「ありがとうございます、次回は別の店をご利用くだされば、結構でございます」なぜか私はよく聞く言葉だ。
「****円でございます」
「ああ わかった」私は胸ポケットに手をやった。無い。財布が無い。しまった。酔っ払い女だ。スリのプロか。はじめから私が負けることは無かったのか。彼に財布は渡っていたんだろうか。1万以内の勝ちで収めたかったのは彼の方だったのだ。
色々なことがつながった。いつからマークされていたんだろう。
「彼らに財布を取られた。今取り返してくる」店を出て行こうとすると、スタッフが数人前に立ちふさがった。
「これ以上、やめてもらえませんかね。裏プロかなんか知りませんが、金も持たずに入ってこられたんじゃあ」
「いや、違うんだ。それより早く追いかけないと100万だぞ。そっくり持っていかれてしまう」押しのけようとする私を後ろから羽交い絞めにしてきた奴。
スイッチが入った私は、スタップの1人を床に叩きつけ、ダーツの先端を鼻の穴に置いた。
「嘘じゃないんだ。こんなはした金のために、逃げたりしない」失礼すぎるじゃないか。私がそんな情けない犯罪に手を染めるとでも思っているのか。
「ひーーーーー、タス たす 助けてええくれええええ」
「お客様、お客様」私に向かってスタッフが走ってきた。手には私の財布を持っている。
「ど ど どうぞ、テーブルの下に 落ちてましたよ」
「ん あ あそう」私は、何事も無かったかのようにスッと立ち上がった。スタッフに手を差し出したが、なぜか転がるように他のスタッフの後ろへ隠れてしまった。気持ちのすれ違いは、なかなか埋められないものだ。
問題を整理するのは、後にして、煙のような脱出のミッションをクリアしなければ。
「いくらだったかな」
「も もう 結構ですんで。早く帰ってもらえますか」
「私は、そんな軽犯罪者では無いんだよ。これ以上は言えないんだが」私の魅力有る笑みに、スタッフは舞い上がったのか、目をさらした。ん、そむけた感じもするが。
カウンターに1万円札を放り投げている、瞬間に私は煙のように消えた。完璧な脱出。

「あいつ、なんだったんだよ」「おかしいだけだろ」「怪我無かったか」「ぱっと見は普通だったのにね」「薬やっちゃってるんじゃないの」

「なんで、勝たなかったんだよ」
「あいつ、あの時近づいてきたろ」
「ああ、気になってたんだ、何言ったんだ」
「「後ろから、狙ってる。ダーツの腕前はわかってるだろ。一生狙われる恐怖を味わうことになってしまうよ」」
「な、な、無理だろ。やばいよ。ゾッとしたぞ。いかれてるんだよ」

私は、不完全なミッションになってしまったことを悔やんでいた。
どこで、何が間違っていたのだろう。
それよりも、次の町へ移動しなければならない。この町には私の名刺を置きすぎたようだ。

私は、殺し屋。履歴書の職業欄に殺し屋と書きたいぐらいである。

累計
殺し 0
ミッション 1
完了ミッション △1

注:ダーツに関する知識いい加減なので、間違いも多々有ると思います。
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コメント

ぎゃー 今回も超面白いです、一気に読んじゃいました^^
ちと税金の申告で、忙しいので、感想は後日にまたゆっくり書きます。
とりあえず、挨拶にてごめんなさい。

クロライさん、短編集ということで出版社に持ち込みましょうよ^^
絶対、いいと思うけどなあ。
ちょっと冷徹なヒットマンを予想したら結構ドジで笑えるし、読んでいて次の行を読むのがこんなに楽しみなんて、ほんと冴えわたってますねえ。
絶対に世に出してくださいよ。多くの人に読んでもらいたい。
mapの方はそれでもなんかドラマで見たことがあるような気もしたけれど、このダーツの展開はちょっと異色。クロライさん、ダーツやったことなければこういう風には書けないですよね。おそらく経験者なのでしょうね。ダーツをやったことのない人間にとってはとっても新鮮で、知らない世界を覗くようで好奇心をかきたてられました。あっ、Mapのホテルの場面も自分には縁遠い世界(ウソだろ)だったんで面白かったんですけどね。^^;

ハードボイルドなはずなのに。。。
何故かちょっと。。。かなり違うのよね~。。。(^^;

これを原作に漫画とか書けば、また最高に面白そう~www

しかし。。。こちらの主人公も何だか愛嬌のある男性ですね
実際いてそうだし、おったらちょっと周囲は困る気もするが(^^;

「オレの後ろに立つな」に加えて
「オレの前に立つな」とも言いそうな条件反射は
殺し屋としてはどのような評価になるのでしょうか。。。
ちょっと心配な気もします。。。

このおちゃめなハードボイルド感が筒井康隆を彷彿させ
ますますクロライさんの次号から目が離せません!!

カトマキさま

ここに返事を書く方がいいかなと、ちょっと変更。変更多いなあ。
筒井康隆氏の作品おもしろかったですよね。
俗物図鑑ってので、死ぬくらい笑った思い出があります。
あの人は、天才ですからね。
いつもありがとうございます。

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プロフィール

ゴリラ系ゴリラ

Author:ゴリラ系ゴリラ
なんとなく浮かんだStoryが膨らんでいくときが最高。

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